VAL-MAPの適応症例

①肺の結節性病変の切除が必要で、定型的な肺葉間以外の切離線の設定が必要な症例であり,かつ
②術中同定困難が予想される,または切除マージンの確保に注意を要する症例。
こうした症例は以下のいずれかに該当する。
A) 病変の特性から術中同定困難が予想される病変
i) 全体または一部に(ground glass opacity: GGO)を含む病変
ii) 腫瘍径が5 mm 以下の病変
iii) 胸膜からの距離が腫瘍径より大きい病変
B) 背景肺の状況から術中同定困難が予想される病変
i) 高度な胸膜癒着が予想される(例:開胸手術の既往)
ii) 既存の良性結節があり紛らわしい(例:珪肺、陳旧性結核)
C) その他の理由により特にマッピングを要すると判断される病変・状態
選択術式:VAL-MAP支援による肺切除の最大の目的は,「過不足のない切除」を実現することである.VAL-MAPのデザインは手術術式によって大きくかわるため,呼吸器内科医がVAL-MAPを行う場合でも,呼吸器外科医と術式,マッピング計画について十分すりあわせを行うことが重要となる.
術式選択について,先行多施設共同研究(MIL-MAP study)では,比較的小さく末梢に存在するpure GGOや転移性肺腫瘍には肺部分切除が,深部に存在する腫瘍やsolid componentを伴うGGOには区域切除が行われることが多かった(3).
やや深い位置にあるpure GGOや転移性肺腫瘍の場合,末梢にあれば部分切除でよいことを考えると必ずしも解剖学的な区域にとらわれる必要はなく,十分なマージンを確保する目的で必要十分な中枢脈管処理をした上で肺実質をステープリングする部分切除のような区域切除もVAL-MAPを用いることで確実に行える.
また,区域切除の適応を考えるときに,腫瘍は必ずしも解剖学的区域に従って生じる疾患ではないこと,またGGO病変は区域間にしばしばみられることを考慮すると,隣接区域に少し切り込むような切除や区域+亜区域切除(例:S6+10a),亜区域合併切除(例:S6b+8a+9a)のような拡大区域切除・複雑区域切除も,従来の解剖学的区域に囚われることなく行うことができる(図4).