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NTT東日本関東病院

NTT東日本関東病院におけるVirtual-assisted lung mappingの取り組み

NTT東日本関東病院 呼吸器外科 柳谷昌弘

当院でのVAL-MAP導入の経緯と現在までの取り組みについてご紹介させて頂きます。私たちの施設は,先進医療BのVAL-MAPの多施設共同研究(臨床試験登録番号:UMIN000022991)に参加し,2016年12月からVAL-MAPを開始いたしました。2020年3月までに33例の患者さんに対してVAL-MAP法を行ってきました。

1.当院におけるVAL-MAP導入の経緯

当院はCT検診ですりガラス結節を指摘され紹介される患者さんが多く,早期肺癌に対する積極的縮小手術を多く行ってきました。以前は術中の触診法を用いておりましたが,触診でも同定困難な症例を私たちは経験してきました[1]。

下記の画像は触診困難だった肺結節です[1]。左下葉の末梢側にあり,触診を行い病変部の局在を同定した上で縮小手術を試みました。しかしながら術中に病変部は触診できず,左下葉切除を行いました[1]。最終病理診断は肺毛細血管腫でありました[1]。

Figure 1.左下葉すりガラス結節 文献1から引用

検診で発見されるすりガラス結節は年々増加傾向にあり,上記の通り,触診法では同定困難な病変にあたる機会も増えてきました。そこで私たちは先進医療Bの共同研究に参加してVAL-MAPを導入致しました。

2.当院におけるVAL-MAPの工夫

当院ではVAL-MAPのマーキングの精度を高めるための工夫として側臥位での色素注入を積極的に行なってきました[2](Figure 2)。VAL-MAPの問題点といたしましてはカテーテルが肺胸膜表面に至らずに噴霧してしまう(中枢噴霧)ことによるマーキング失敗と,逆にカテーテルが肺胸膜を損傷することで起きるブラ形成や気胸といったものがあります。この問題を克服するために側臥位での色素注入は有効であると考えております[2]。

従来,気管支鏡や色素注入は仰臥位で施行されることが多かったですが,佐藤らは側臥位による色素注入を提案していました[3]。仰臥位で背側にマーキングを置きたい場合には背側の肺が無気肺となり注入が難しくなる,さらに仰臥位で腹側にマーキングを置きたい場合には重力効果でマーキングが行き届きにくくなるという懸念がありました。我々は後方視的に解析を行い,側臥位での色度注入はマーキング精度を高めるであろうことを報告いたしました[2](Figure 3)。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/corecgi/tileshop/tileshop.fcgi?p=PMC3&id=331702&s=85&r=1&c=1
Figure 2 側臥位 文献2から引用
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Object name is jtd-11-01-162-f2.jpg
Figure 3  仰臥位と側臥位でのマーキング精度 文献2から引用

引用文献

1.Hashimoto H, Yanagiya M, Suzuki Y, Kusakabe M, Usui G, Matsumoto J, Horiuchi H. A case of solitary pulmonary capillary hemangioma indicating true gross appearance. Pathol Int. 2017; 67: 322-323.

2. Yanagiya M, Matsumoto J, Yamaguchi H, Nakajima J, Sato M. Effect of patient position during virtual-assisted lung mapping. J Thorac Dis. 2019; 11: 162-170.

3. Sato M. Virtual assisted lung mapping: navigational thoracoscopic lung resection. Cancer Res Front 2016; 2: 85-104.

4. Yanagiya M, Kawahara T, Ueda K, Yoshida D, Yamaguchi H, Sato M. A meta-analysis of preoperative bronchoscopic marking for pulmonary nodules. Eur J Cardiothorac Surg. 2020; 58: 40-50.

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これまで、多施設共同研究など、日本、そして世界の多くの方々の協力でVAL-MAPは発展してきました。今後も患者さんに理想の治療を提供できるよう、研究開発と普及に努めてまいります。 日本VAL-MAP研究会 〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学医学部附属病院 呼吸器外科医局 内 代表 佐藤雅昭

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