インジゴカルミンを用いたVAL-MAPは保険診療として実施可能となりましたが,同時に先の先進医療では,切離ラインが深部に及ぶ場合には,十分な切除マージンが確保できない可能性が高まることが新たに分かりました.この部分を強化すべく新たに開発したのが,気管支鏡下に色素マーキングを行うと同時に,気管支内に血管塞栓用のマイクロコイルを留置し,手術中はX線透視も活用して3次元のマッピングを基に肺を切除する次世代のVAL-MAP(VAL-MAP2.0)です.気管支鏡下マッピング実施時の患者さんの負担を増すことなく、手術時のマッピング情報を飛躍的に向上させるこの方法は、肺深部の情報を把握したうえで肺切除を行うという、これまで実現困難だった立体的な肺ナビゲーション手術を可能とする方法です(下図)。

これにより,従来のVAL-MAPを用いても確実な切除がむずかしかった病変に対しても,さらに精度の高い切除が可能になると期待されます.この方法は当院での特定臨床研究(パイロットスタディ)を2018年に実施・終了し、良好な結果がえられました。この成果は下記の論文に掲載されています。
この結果を受けて2019年2月より、当院が主施設となり、VAL-MAP法で実績のある全国8施設(東北大学、東京大学、東京医科歯科大学、聖路加国際病院、湘南鎌倉総合病院、島根県立中央病院、徳島大学、産業医科大学)で先進医療Bとして多施設での臨床試験を行いました.試験のプロトコールは下記に発表しています。
本試験は、2020年5月に、ほぼ予定通り症例集積を終了し、非常に良好な結果が得られました。2021年3月11日に開催された厚生労働省第115回先進医療技術審査部会では、この結果をうけて「血管塞栓用マ イクロコイルの適応外使用の薬事承認申請に資すると思慮 する。 」という評価委員からのコメントが出ており、今後の保険保険収載が期待されます。本試験の最終結果は現在論文投稿中で、受諾され次第公開する予定です。