Multi-Institutional Lung MAPping study (MIL-MAP) study は、京都大学でのVAL-MAP開発以降、VAL-MAP(インジゴカルミンを用いた原法)の有効性、再現性、安全性を検討する目的で、全国の17施設で行われた多施設共同研究です。2016年4月までに全500症例を集積し、681 病変 (1.35 ±1.8 病変/人)を切除対象として1,774 マーキング (3.6 ± 1.2 マーク/人) が施されました。切除成功率は99%(切除マージンは本研究では考慮せず)が達成され、重篤な合併症は非常にまれ(気管支鏡実施に伴うと思われる熱発による手術延期2名、肺炎1名、血圧上昇に伴う既存の脳虚血の一時的な悪化1名)でした。また設備や人員の異なる施設間でも、非常に良好な再現性が確認されました。このことは、「誰でも、どこでも実施できる」というVAL-MAP法の開発当初のコンセプトが、ある程度実現できたことを示しています。
本試験の結果は下記の論文として発表されています。本論文の日本語訳を下記に掲載しますが、本論文はオープンアクセスのため、このサイトからもダウンロード可能です。
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Abstract(要約)
目的:Virtual-assisted lung mapping(VAL-MAP)は、バーチャル画像を使用し術前に気管支鏡下に複数個所の色素マーキングを施す技術である。本研究の目的は、複数の施設間でVAL-MAPの安全性、有効性、再現性を評価することであった。
方法:患選択基準には、胸腔鏡検査で位置を特定することが困難であると予想される肺病変を有する患者、および/または切除マージンの慎重な決定を必要とする患者で、かつ肺縮小切除を受ける予定の患者が含まれた。データは前向きに収集され、必要に応じて、最初にVAL-MAPを開発したセンターと他の16のセンターとを比較した。
結果:500人の患者にVAL-MAPを用いて、1,781カ所のマーキング(3.6±1.2マーク/患者)が施された。追加の治療が必要なVAL-MAPに関連する合併症は、肺炎、発熱、および既存の脳虚血の一時的な悪化を含む4人の患者(0.8%)で発生した。軽度の合併症には、気胸(3.6%)、縦隔気腫(1.2%)、および肺胞出血(1.2%)があり、発生率はVAL-MAP開発施設と後発施設で同じだった。色素マーキングは手術中に約90%で識別可能だったが、切除成功率は両方のグループで約99%であり、これは複数のマーキングが相互に補完的な役割を果たしたことが原因の一部と考えられる。外科医によって評価された外科手術の成功に対するVAL-MAPの貢献度は、純粋なすりガラス結節(P <0.0001)、腫瘍≤5 mm(P = 0.0016)、複雑な区域切除と楔状切除術(P = 0.0072)において高かった。
結論:VAL-MAPは、設備や人員がさまざまな複数の医療施設間で、安全かつ再再現性をもって実施可能だった。純粋なすりガラスの小結節、小さな腫瘍、および従来の解剖学的境界を超える切除を受けた患者は、VAL-MAPの適応症例として特に適切であると考えられた。
本研究の参加施設
京都大学 •東京大学 •順天堂大学 •産業医科大学 •北野病院 •相澤病院(長野) •東京医科歯科大学 •長良医療センター •新潟大学 •聖路加国際病院 •島根県立中央病院 •東京女子医大八千代医療センター •松江赤十字病院 •岡山労災病院 •湘南鎌倉総合病院 •兵庫県立尼崎病院 •松阪市民病院